◆工法の概要
「岩盤の斜面に緑がよみがえる」
NETIS登録番号 QS-980171-V
土壌菌工法とは、自然土壌(A~B層)と同質の構成からなる 土壌母材(ふるい土)・土壌微生物群・有機物・種子を混練した吹付材料により植物生育基盤を造成することで、切土工により失われた自然の表土を再び取り戻し、自然のサイクル(窒素・炭素の循環、食物連鎖など生物界での物質循環)の再構築により、永久的な緑化が期待できる自然育成型工法です。
◆特 徴
【土壌菌が関わる土壌形成(団粒化)と地力・保水排水性の向上】
⇒土壌の養分供給能力・養分保持能力は土壌の無機成である岩石や鉱物の風化と、それによる粘土鉱物の生成が最も大きく関っています。 それに対して、保水と通気は、土壌の有機成分と、それにより活動する土壌菌(土壌微生物)が必須で、これらにより形成される団粒構造を持って担保されています。
有効土壌菌は粘土鉱物を主とした微小団粒を、微生物菌体や有機物により補強し、耐水性の団粒構造へまとめ上げていく役割の一端を担っています。 耐水団粒は耐水性の無い団粒に比べ放線菌・糸状菌の菌糸により物理的に補強されることで強度が高まり、団粒破壊による有機物の露出からの急速な分解も起りにくく、地力窒素の初期放出が軽減され肥料切れを防ぐ事ができます。
また、土壌菌の働きにより形成された団粒構造は、土壌の保水性、排水性といった相反する特徴を備えています。 土壌菌により形成された団粒内部では、微細な毛細孔隙により水分保持し、また団粒外部では、非毛管孔隙により過剰水分を排出するといった、保水性、通水性、透水性などの物理性が良好な状態を形成させています。
以上から、土壌菌工法は団粒構造を形成することで高い保水保肥能力を持つ、自然育成型工法といえます。
【有機物分解による植物への養分供給】
⇒法面における有機物の最大の供給源は植物遺体であり、主に代謝の終わった葉や茎、根などの形で供給されます。 これらの有機物の大部分は、土壌生物および糸状菌や放線菌により分解され、最終的には炭酸ガス・水・アンモニア・硝酸へと変化し植物の栄養源となります。
有機物の分解過程としては、まず水溶性の糖・アミノ酸を利用する糸状菌が繁殖し、次いてタンパク質・デンプンが糸状菌・放線菌(土壌酵素)により分解され、その後ヘミセルロース・セルロースが分解されます。 植物の骨格を形成している高分子化合物のグリニン(木質)は、微生物分解に対する抵抗性が高いため最後まで残り、難分解性の土壌固有の有機物である、暗色無定形高分子化合物の腐食構成物質となります。
土壌中の腐食は粘土と結合し複合体を形成するため、分解は極めて緩慢となり、土中に体積していきます。 しかし無限に腐食が増加する事は無く、一定期間後には蓄積量と微生物による分解量が等しくなり、平衡状態に達します。
以上から、土壌菌工法は自己肥培効果を有したメンテナンスフリーの自然育成型工法と言えます。
【生育基盤の成長(腐食層の形成および岩盤風化の助長)】
⇒土壌菌工法の生育基盤内では、植物の代謝の終わった根の脱落細胞などが分解され、養分として植物に提供されています。 特に根圏(根の先端付近)は有機物が豊富で、土壌微生物の量も非根圏に比べ26~120倍も多いと言われています。
通常 根の先端部は地盤に接触しており、高い活性を伴う大量の微生物が細胞外酵素により有機物の分解をおこなうと、鉱物粒子が開放され、徐々に土壌化が進行します。 ただし、岩盤粒子の開放の度合いは大きくはありませんが、軟質化した岩盤表面に対し確実に根が伸長し活着性も向上します。
また、生育基盤表面においては、代謝の終わった枝葉の堆積により生育基盤は厚みを増し、土壌菌の分解により、更に生産能力が高まります。
以上から、土壌菌工法は、生育基盤の成長や潜在肥料分の安定など、永続的緑化が期待できる自然育成型工法と言えます。
【特殊土壌における緩衝能】
⇒土壌母材自体の緩衝能や土壌菌が産生する細胞外多糖類によるバイオフィルムにより、生育基盤の酸性化やアルカリ化を抑制し、植生環境の劣化を防止します。 施工実績として、PH(H2O2)=1.3の強酸性からPH=9.5のアルカリ土壌までの緑化実績を有しています。